“Elegant”という言葉が便利すぎる件について

ワインを勉強していると、「Elegant(エレガント)」という言葉を耳にする機会は非常に多くあります。

Old WorldのワインはNew WorldよりElegant、日本ワインはElegant、etc…

試験対策として「こういうワインはElegantと表現しておけばよい」と教わることもありました。

実際、この表現は決して間違いではありませんが、私はこの言葉を聞くたびにもやもやした気持ちになっていました。

「結局、何がElegantなのだろう。」

テイスティングでは、複雑な印象を一つの単語で表現したくなる場面があります。

例えば、

  • アルコールが控えめ
  • 酸が高い
  • 樽が主張しすぎない
  • バランスが良い
  • 繊細な舌触り

こうした特徴が重なると、「Elegant」という表現がしっくりくることがあります。

初学者にとっても使いやすく、教育用語として非常に優れています。実際問題として、試験では採点者との認識を共有するためにも便利な言葉でしょう。

一方で、Elegantという言葉は便利であるがゆえに、時として思考を止めてしまいます。

ボディが軽いからElegant?

果実味が控えめだからElegant?

アルコールが低いからElegant?

もしかしたら単に構造が弱いだけ?

これらは全く異なる話です。

一つ、体験談を挙げてみましょう。以前、ある生産者のワインを試飲した際、「うちはElegantに造っています」と説明を受けたことがありました。確かに繊細ではありましたが、私には果実の密度や構造そのものが不足しているように感じられました。どちらが正しいかということではなく、「Elegant」という一語だけでは、ワインの実態を十分に表現できないというのがこの体験の本質です。

日本ワインはelegant?

日本ワインは全般に、「Elegant」とよく評価されます。確かにどのワインを飲んでも奥ゆかしいというか、Napa Valleyのようにものすごく強く主張してくるというものは殆どありません。

あくまで私の感想ですが、一つ特徴を挙げるとすれば、品種に関係なく、生のブドウを思わせるような風味が残っているというのはあると思います。

山ぶどうでも、デラウェアでも、あるいは高価格帯のワインでも。「生ブドウ感」以外にまだ適切な言葉が自分の中で見つかっていないのですが、この共通したニュアンスは、日本ワインにしばしば見られる個性の一つなのではないかと感じています。

一方で、海外のワインでは果実味が豊かでFreshと感じることはあっても、この「生ブドウ」の印象を受けることはあまりありません。この違いがどこから生まれるのかはまだ分かりません。

気候なのか、醸造なのか、それとも収穫時の成熟度なのか。(私の気のせい、という説も当然あります(笑))

「Elegant」はワイン版の「風邪」

以前、「ミネラル」という言葉は、多くの意味を一つにまとめた umbrella word ではないかという記事を書きました。実はElegantも、それに近い存在なのかもしれません。

臨床現場で「風邪」という言葉は便利ですが、専門家としては情報量が少なく、医者は

・ウイルス感染?ならどのウイルス?(インフルエンザ?COVID-19?ヒトメタニューモウイルス?アデノウイルス?)

・細菌感染の有無は?

・花粉症?

など様々な可能性を頭の中で考えながら処方を考えています。

Elegantもまた、入口としては優れた言葉ですが、ワインを詳しく説明しようとするとその曖昧さが逆に足枷となります。

「Elegant」という表現を見かけたら、その先を考えてみませんか。

酸?果実味?余韻?もしかしたら、単に言葉にしにくい印象を一つにまとめているだけかもしれない。

自分の言葉で説明してみると、テイスティングも楽しくなるかもしれません。

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